ライヴを体感すること

YOUTUBEってのは、罪作りなメディアでね。あるミュージシャンの、本人なら見せたくないようなものまでどんどんアップされてるわなあ。

今日も、きっかけは最近ぐりぐりにはまってるデレクトラックス関係を探そうとおもってみてると、まずはこんなことあっていいのかどうか分からんけど、クラプトンバンドの一員でデレクトラックスが今ワールドツアー回ってるから、この夏のヨーロッパツアーの映像がもうアップされてて、僕はその一連のでもう数曲、このバンドのライヴを見てしもた。

見れたのは、4箇所からの6曲くらい。で、別のデータベースには、5月5日から7月31日までのセットリストがもう上がってるし、どうも会場録音レヴェルではトレードも始まってるみたい(会員制)。それ見てると、今回は曲目がほぼ固定に近いスタイルで、アンコールで徐々に増やして行ってるみたいやね。で、僕にとっての最大の関心事は「レイラ」や「マザーレス・チルドレン」でデレクがどう出るか、うん、スライドでどう来るかなわけやけど、いやあ、素晴らしいです。それはもう予想以上に。

 とまあ、今日も収穫ありまくりのYOUTUBEでしたが。こういう状態が今後あたりまえになったら、ライヴ観戦の心理状態もやや変わるかもしれんなあと思ったんよなあ。予習段階で、大枠がわかってしまうライヴに行くわけやから、進行上のスリルとか、メンバーの組み合わせ上の新鮮さは、若干減るからね。ただ、こうやってUPされるライヴ映像や音源は、「過去のライヴ記録」でしかないから。それを僕らはリラックスしてボーッと部屋で見ているだけなんで、ライヴを見たとは絶対にいえないんでね。

ライヴってのはその日その場所で一回だけのもんで、それはつまり僕ら観客とアーティストの邂逅が、その日にしかないことからの化学反応なんでね。よく、こんだけ事前に見えてしまったら行くことないとか、TVでまたやるしなあとかいうバカがいるけど、それは根本を間違ってるから。そして、その根本まちがいしてるヤツラが、日本にはものすごく多いんよなあ。 そこにいないとライヴを「見た」ことにならんのよ、みなさん。ライヴは時間と空間の共有やからね。

例えば城ホールまで車で出かけてライヴを見るとなると、その日一日全体がイベントやんか。距離に関係なくね。開場されて、グッズ見に行ったり、待ち合わせた人を探したり、思わぬおいしいもの買えたり。もうここからライヴって始まってるやん。で、ストーンズみたいに出マチのSEが全部シカゴブルーズやったりして場の空気が変わっていって、ライヴが始まるんやんか。僕らはそんな時間を買うわけやん。うん、特別な時間をね。だから、誰のライヴでもいいけど、当日その場にいた人にとって、その日のライヴは「最高やった」で、僕はいいと思うで。 ステージ上からアーティストがお客さんを貶めない限りはね。

話は変わるけど。最近、日本のアーティストのライヴにマナーの変なヤツらが来るんやわ、って聞いたんやけど。日本のビッグネームね。その人たちは、僕に言わせれば、アーティストとの邂逅を特別な時間に思っていない、日常生活の延長でライヴに行くような、想像力・感受性の極めて低いやつらで、そんなヤツらが音楽を感じられているとは思いがたい。恐らく容姿のような目に見える部分を主に好きなんでしょうね。音楽はその次という。ああ、そうそう、あれと同じや、甲子園大会の「ハンカチ王子」ね。147キロのストレートを延長15回に外角低めに決められるピッチャーやのに、その実力より見てくれが広まるという勘違いね。騒いでいるあんたはエアコンの部屋にいるんやで。

こいつらが困るのは、想像力が低いから、他のお客さんがどれだけライヴの時間を貴重に思っているか分からないんよなあ。だから傍若無人な振る舞いを平気でしていることにも気がつかない。聞いた話では、ケータイの撮影はするわお菓子は持ちこみでバリバリいわせてるわ、もちろんオーディエンス録音するわ。

そういえば、大分前に山崎まさよし見たときも、なんかアンコールでバレーボールの「ちゃちゃちゃ」あるやん、あれみたいのがあって、それがセカンドラインみたいにカッコエエ!っていうハンドクラップやったら「オー!」って思ったろうけど、恥ずかしいくらいビートがないんよ。リズム音痴ね、はっきり。きょうび、甲子園のライトスタンドでももっとビート感あるでっていう。で、お客さんは殆ど失笑して協力しない。協力しないから、やってるヤツラ、強要するように必死で続ける。これなんか、他者への想像力の欠落やわな。「空気読めんか?」っていう。僕はその日、素晴らしい音楽を聞かせてくれた山崎まさよしを可哀相に思った。そこが問題なんよな。僕のように、音楽はいいけどライヴの体感はカンベンしてくれって思う人が出てくることがね。

そんなファンをもつアーティストは、ファンたちにゆっくりと時代から離されていって、ファンの世代交代も少なくなって、ある世代の愛玩物になることが多いのは、皆さんもご存知だと思うのですが。例えばジュリー。例えば渡辺美里。例えばアルフィー。彼らが今でもコンサートを満員の観客の前でやっているのを知ってますか? でも新しい曲は僕らに届いてこないですよね?そういった事です、言いたいのは。閉じた円環の中でアーティストを囲んでいると、アーティストの表現生命は衰弱しますよーってね。好きなアーティストに、常に最前線に居てもらいたいなら、新しいファンでもすんなりそこに居れるような空気を作ったらいいのに。自分がよけりゃいい、だけでは、貴重なライヴの場が死にますよ。

そして最後に、アーティストを殺しますよ。