番外編:トータス、オーサカ、オーイェー!

  

 前から気になってたし、そんなんあったら嬉しいなあということが現実になりました。ウルフルズ・トータスのソロアルバム。グレイトR&Bのカバーであると。 いやあ、これはウレシイです。出来とかはどうでもいいねん。トータスがそんな企画でソロ出すのがうれしいねん。

 84年くらいかなあ、桑名正博がソロでR&Bのカバー・ミニアルバムを出したんです。スピナーズとかピケットの、いい選曲のアルバムでした。ジャケットも初期アトランティックレコードのフェイクで、ついにやってくれたよなあマサやんとか思った。ただ・・残念ながら、ミックスする人がその辺のセンスを全然わかっていなかったようで、はっきり言ってしょぼい音になってたんです。 でも当時はそんなことどうでも良かった。 とにかくルーツをキッチリ提示してきたマサやんのミュージシャンシップに、僕らの周りは拍手しました。自分がどこに立っているかを正直に見せてくれるミュージシャンって、オーディエンスへの責任が感じられて、僕は大好きやったから。

 今回のトータスのソロも、CD屋さんの解説では全曲ブルーズ・R&Bで、50年代〜74年までの名曲ばっかで。あいつのサムクック好きは知ってたけど、まさかBRING IT ON HOME TO ME を出してくるか、とか、そのサムのバンドでギター&バンドマスターをやってたボビー・ウーマックの、70年代の名曲・ルッキン・フォー・ユア・ラヴや、マディーやマジックサムの曲までやってる。 うれしいなあ。 出来なんてどうでもええ。やることがうれしい。「僕はこんなところから来たんやで。」と、はっきり出してる。 誠実や。 この辺が関西ミュージシャンの余裕なんですよ。 血で音楽をやってる、と、以前ユーミンがラジオでトータスのこと言ってたけど、その通りやね。その血は、間違いなくオオサカという街で練れた血ですよ。 

 数少ないガイジンの友人・アイザックとか、会社関係でのガイジンとかはみんな、オオサカはミュージックタウンの匂いがあるといいます。それは、地元の人々の無理のない音楽との関係があり、嗜好が人とは違ってもお互いを認めるというか、お互いの知っている音楽を面白がって、ドンドン知識が増えセンスが磨かれていく風土があるんよな。 その辺は、本当に柔軟ですよ、すんでる人のセンスが。 

 トータスが、年に似合わず古いR&Bが好きなのは、好きでいられたのは、そんな流行無視の個人嗜好主義がオオサカの感覚の根底に流れているからです。だから、世界に通用するボ・アダムスとか少年ナイフも出てくるんやね。彼らはウルフルズがオオサカでやっている頃、同じ街から世界に旅していましたっけ。都市だから世界への窓口があって、そっから直接アメリカに飛び出せる。そんな人脈も残ってるんやね。

僕も一時期オオサカで毎日過ごしていました、仕事で。すると、ビックリするくらい、地元の人たちの中に音楽があるんよな。それは演歌やったり、ロックやったりいろいろなんやけど、無理なく体の中にあるんよな。で、音楽をプレイする人たちを大事にするんです。もちろん、それを仕事にしているというと、そこからは意見が分かれるんやけどね。でもその事も、僕には反対する人はやっかみが入っていると思いました。「出来たら自分もその楽しさの中にいたいなー。」みたいな。 そんな風土があるんですよ、オオサカ。 それに加えて、個人商店を応援する気風が人たちの中にあるやん。独立して何かで当てたろって人たちを、厳しくでも優しく応援する。そんな風土。 

 トータスが2003年に古いR&Bやブルーズのカバーでアルバムを出す。その事には、実はそんな背景がきちんとあるように僕には思えます。 ここらでみんなへの愛を確かめとこか、みたいな。 

 オオサカに関しては、実はまだまだ書きたい事あるけど、今回はこの辺で。