番外編 幻のアルバムを探して

  

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 昔に関西フォークを聴いていた人なら、多分知っているでしょう、バンバンというバンドが3人だった時代を。僕は例のイチゴ白書よもう一度以前の、その3人組だった頃のメンバーで、今や演歌歌手のような?高山厳さんのソロアルバムを、実はもうかれこれ20年以上探しています。

 リリースは74年か5年。ほんと、この頃の日本のロックはいいアルバムが沢山出ていますね。ミカバンドの3RDやサウス・トゥ・サウスユーミンのコバルトアワー、幸介さんの「箱舟」、シュガー・ベイブ…。もっともっと。 でも、夏のある日に、当時のバンドメンバーから彼のアルバムのテープを渡されたことが、もしかしたら僕にとっての大きなターニング・ポイントではなかったかと思います。 素晴らしいアルバムでしたもん。

 バンバン時代も、彼の曲をやりだした途端、それまでとまったく違うバンドに聞えたくらい、彼のヴォーカルと作曲能力は高かった。それまではどちらかというと、嫌いなバンドだったのに、厳さんの音楽性を前面に出してきてからのバンバンは、ライヴでもすごく良かったようです。でも、それまでの先入観が僕にはあって、「ああ、あのバカ話が異様に上手いヤツがおるバンドやろ?」といって、アリス周辺のバンドが好きな女の子が折角教えてくれているのに、高校生のときはきちんと聴こうともしなかった。特に74年ごろは。若気の至り。

 彼がバンバンを脱退し、東京のソウルフル・ブラッズというバンドのメンバー達と創った1ST ソロアルバムは、バックメンのたしかな腕に支えられた演奏と、粒ぞろいの曲、それに厳さんの色気ある男っぽいヴォーカル(といってもシャウト系じゃない)が、なんとも言えない世界を作っていたものでした。特にアコギでの曲は、フォークくさくない乾いた世界を持った曲が多く、その高い音楽性にびっくりしたものです。

 もうテープもなく、だいぶん忘れかけてるんですが、斎藤和義が出てきたときにびっくりしたのは、厳さんの声にそっくりだった事でした。歌い方もあんな感じ。でも歌詞はもう少し男っぽい感じ。だったかな…。強烈さはないけど、染み込んでくる良さ。そんな音楽でしたから、すぐ廃盤になったと思いますが。気恥ずかしいくらいの甘いラヴ・ソングもあるのですが、渋い達観したような歌詞世界もありました。何曲かは未だにアレンジまでしっかり覚えています。

 最近特に、この、当時でさえ時代遅れな「照れ」を持っていた、無骨な男の歌を聴きたいなあと思います。もしこれをお読みの方で、厳さんの1STアルバムをお持ちの方がいらっしゃったら、ご一報いただければありがたいです。

本当にいいですよ。