NIPPON NO ROCK GUITARIST

ykawabata452004-09-29

 どうです、この素晴らしいジャケット。どうしてもこのジャケットを紹介したくて、これを書いているといってもいいでしょう。彼のストイックな肉体と顔つき。諦観と強い意思を感じるまなざし(であろう)。右手にはレスポール。シャツのようにも、サムライの着物の袖が引きちぎられたようにも見える衣服。ロングヘアを束ねているようにも、ラフな刈上げから伸ばすに任せたようにも見えるヘア。本当に音が聞こえてきそうです。

 このCDは、70年代の日本のロックギタリストの、様々なセッションを一人別にコンピしたシリーズで、この写真のは大村 憲司さんのもの。他に、山岸とか鈴木茂とかも出ています。ここ数年の「ギターマガジン」による、彼ら70年代のギタリストたちのバイオを丁寧に編んでいくいい仕事のおかげで、僕はあの時代のロックギタリストは、日本のロックの中で、恐らく一番とんがっていたんやろうなあと考えるようになりました。

 個人的に何人かを紹介しますね。順不同です。
まずは、やっぱり鈴木 茂。「はっぴいえんど」の冒頭のギター初めて聴いたときの衝撃は、今も残っています。はっぴいでの幾つかの名演のあと、ユーミンの「ミスリム」でのあのプレイ!が鳥肌モノでした。和音で作るあのフレーズたちは、なんと練習なしのほぼガチンコ一発ものでOKが出たそうです。なんと言う才能。他にも幾多の名演があります。コードの流れと聴こえてくる音で、瞬時にメロを考えてアレンジして弾くという、もの凄い才能ですね。

 次は大村憲司。赤い鳥のバックバンド「エントランス」時代から、ブルーズベースの先端のギターを弾いてはったけど、地力を見た思いがしたのは80年代初頭の小さなライヴハウスでの「ジョージア」とかでのギターでした。とんでもなく柔らかいトーンから、攻撃的なところに一瞬で飛べるひとやったなあ。勿論、歌うし、ギターが。

 多田 たかし。CAM'Sのギタリスト。何で今まで聞かなかったのかわからんけど、03年に初めてライヴで聞いてぶっ飛んだんです、多田サンのギター。60年代アート系の代表「裸のラリーズ」から、京都で日本のロックをずっと見ながら独自の活動をしていたので、あまり知られていないと思いますが、ブルーズベースながら、JAZZから中近東音楽までを取り込んだごっついスタイルです。考えられないフレーズが轟音で飛んでくる気持ちよさと、バラードでの「泣き」。現時点で、僕が最も好きなギタリストです。

 そして塩次伸二。ウェストロードのアグレッシヴさと「引き」のかっこよさも勿論やけど、ウタバンの見事さが近年際立ってきていると思います。もう、国宝モノのトーンで、つややかなギターを歌います。伸ちゃんは音楽の天才です。天才は努力します。僕はそれをシンちゃんで知りました。だって6時間くらい1人でギター弾きっぱなしとか見たもんね。

 石田 長生。なんといってもソーバッド・レヴューでの、ファンクギターとR&BとJAZZを自分なりに混ぜこんだ唯一無比のスタイルは、75年当時、衝撃的でね。普通、「ああ、この人はここからきたんや。」というルーツが、まあ30秒ほどで見えるんやけど、この人はわけわからんかった。体感してきた音楽全部をギターで弾いてきた凄味が、1時間程度のライヴが終わってから押し寄せてきた。同じバンドに、これもまた強烈な個性の山岸 潤史がいたんやけど、僕は石やんにぐーっといってしもたなあ。

 CHAR。衝撃の1STソロアルバム。すっごいリズムのいいやつ!ベックよりリズムがいい!ここまでロックギターと黒人のファンクギターを自然に身体に入れたヤツっていなかったもん。それまでの人は「勉強・研究」やったから。もう圧倒されて。今と同じくらいか、いや、当時のCHARはライヴでは今より弾きまくりやったから、もっとリズムが立ってたなあ。それとユーモアが音楽にある点もうれしかった。

 山下達郎。あんまり語られないけど、この人のリズムギターは日本で5本の指に入ると思うな。本人ヴォーカリストの意識が強いから、アンプに直結でコードを弾くだけやけど、このリズムの立ち方は、特に80年から85年くらいのアルバムでのリズムギターのグルーヴは、それだけ聞いてても踊れてくるくらいです。ソロもええんよな。黒人NYスタジオ系の、間が多い歌うソロを弾く。好きやなア。

 うーん。こんなところかなあ。勿論好みでのチョイスですが。ただ、こうやって書いてみるとよくわかるのは、それまでになかったスタイルを持ち込んだ人たちが多いな。彼らの音楽が、その当時画期的であったということにもつながるんやけどね。

 勿論、松原正樹とか今 剛のような凄腕ギターもいますが、彼らは「勉強系」ですからね。新味がなかったもんね、登場時には。時間がたっても印象が残る人といえば、僕は彼らだという事です。この辺、好み大きいから難しいね。